Q&A


  ■アドリブ時における演奏家の意識vol.3
質問:回答大変ありがとうございました。回答の方読ませて頂きまして、
大変参考になりました。いまでは、クイーンのソロは完成度が高いもの
ばかりなのでスタジオ録音の場合はアドリブではなく事前に作るタイプ
なのだろう、と思うことにしています。しかしそうなってくると、
『コピーする際には、ソロとバックコードとの関係を確認する』というのは、
具体的にどういうところを確認すればいいのでしょうか。例えばツェッペリン
の『BBCライブ』の『サンキュー』のソロなどでは、キーがDメジャーで、
まあロックですのでブルーススケールとしてDマイナーペンタと
Dメジャーペンタを交互に使っている感じです。Dマイナーペンタの
10フレット〜13フレットのシェイプを使ってソロが始まり(この時の
コードはDです)、コードがCに変わるときに3弦9フレット→4弦10
フレット→5弦10フレットという音を出します。この3つの音の
ポジション移行って、Dブルーススケールの10フレット〜13フレットの
ポジションから見て、あまり使われない指使いだと思うのです
(まだまだコピー経験は少ないですが)。で、『よくジミーペイジはこんな
(あまり使われない)フレーズが頭の中で鳴るのはいいけど、その音を即時に
体現できたな〜』と思ったのですが、よく見ると6弦8フレットルートの
Cメジャーを押さえているところを順番に弾いていっただけじゃないか、と
思ったのです(ただ相対音感だけで弾いたのかもしれませんが)。
『これがバックのコードを意識しながら弾くっていうことなのかな?』と
思ったのですが、『コピーする際にソロとバックコードとの関係を確認する』
というのは、こういうことを確認して、次から自分のソロに生かす、と
いうことなのでしょうか。お願い致します。(from らーめんさん)


回答:らーめんさん、熱心な質問ありがとうございます!!
具体的に細かな質問いただけると、僕も細かく返せますから
結果的に読者の皆様に解りやすく伝わるので、とってもありがたいんですよね。
さて、御返事です。

>よく見ると6弦8フレットルートのCメジャーを押さえているところを
>順番に弾いていっただけじゃないか、と思ったのです

これは、コーダルなアプローチの一つ「ブロークン・コード」という技術です。
ブロークン・コードとは、アルペジオとは少々違って単音のソロとして、
「コードの構成音」をばらばらに弾いていきます。ばらばらに弾く順番は
勿論何でも良いです。また、例えばコードがCMaj7の時にEmコードのブロークン・
コードを弾く、なんて場合も良くあります。要はサウンドがどう鳴るのかです。
CMaj7にEmの構成音を弾くと、CMaj7=C、E、G、Bですから、ルート以外の
全ての構成音をEmブロークンコードによって演奏できるようになります。

例えば、C7に対して、B♭のブロークン・コードを弾いたとします。
こんなのはずれてる、って思うかもしれませんが、
C7の構成音=C、E、G、B♭  B♭の構成音=B♭、D、Fになりますので、
結果的にC7というコードサウンドに対して、minor7th、9th、11thというサウンド
を弾いていることになりますから、サウンドとして、C11という響きを音楽に
与えることが出来ます。決まりはないんです。どういうサウンドが欲しいかです。

しかし、予め「バックのコードがC7なんだから、B♭のブロークンを弾こう」って
思ってなければ弾けるはずもありませんよね?これが、「バックのコードを
意識しながら弾く」という事です。勿論、イングヴェイ・マルムスティーンみたい
に、「Amのコードサウンドに対してAmのブロークンコードを弾く」というアプローチ
も良いですが、彼はサウンドにスリルが欲しいので物凄いスピードで演奏する訳です。

コードの構成音にプラス、「そのコードが持てるテンション音」まで付加して
捉えると、いわゆる「コード・スケール」という奴ができますが、いずれにしても
そのコードの構成音が何か、ということは意識しているとメロディックな
アプローチはやりやすくなります。

>まあロックですのでブルーススケールとしてDマイナーペンタと
>Dメジャーペンタを交互に使っている感じです。

これは、ちょっと誤解です。メジャーの曲に(長調)、基本的にマイナーペンタ
は使いません。そういうときは、マイナーペンタではなく、「ブルーノート・ペンタ」
になります。何が違うかというと、短3度の扱いなのですが、ブルーノートペンタでは
短3度の音をクォーター・チョーキングする、もしくは長3度の音にハンマリングや
スライドするフレーズを多用します。逆にマイナーペンタの場合、短3度を強調する
フレーズというものが出てきます。普通のブルース・ロックの場合は短3度は
ブルーノートとして解釈するほうが多いと思いますよ。(^^)また、減5度や
クロマティック(半音のフレーズ)も多用しますね。そういう時って、各コードが
ナントカ、ってあんまり考えていなくて、前にお話した「モーダル」なアプローチで
プレーヤーは演奏している、って考えてしまって差し支えないと思います。
ブルーノート・ペンタトニックのフレーズはコードに合わせて、という考え方ではなく、コード無関係に「カッコ良いフレーズを連発」していく、という考え方の方が良いと
思います。ロック系の場合、75%はモーダルな考え方でコードを気にすることなく
ブルーノートのフレーズを連射し、残りの25%でこのコードは大事にしたい!って
いう場合は、そのコードに対するコーダルなアプローチを使うのが普通です。
モーダルだけ!とかコーダルだけ!とか偏ったアプローチってあんまり無くて、
実際にはこれらをバランス良く使い分けている、というのが現状なんですよね。

いずれにしても、アドリブソロをかっこよく決めるには、
・メロディーが流れていく(メロディーが小節線を越えてつながっていく)
・メロディーがグルーブしている(ノリが良いということ)
ということが成り立たないと、コードが何であれ、スケールが何であれ
沈没してしまうことになるので、そこだけ十分気をつけてくださいね!!(^^)

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