Q&A
質問:セッションミュージシャンになる為には
オーディションはあるんですか?
セッションミュージシャンになるための必要な技量は
どのくらいなんでしょうか?
ヌーノ級(三連符、ノリの出し方が特筆してると私は思う。)、
ヘイレン(少しルーズだが、実際はソロより
バッキングがすばらしい)、
バッキングの上手さが求められるんですよね?
変な質問ですいません。
あと、8f、11f、16fのストレッチできたら
手はでかいほうですかね?私は届きます。(from渋谷さん)
回答:こんにちは渋谷さん、メールありがとうございます。
セッションミュージシャンですね?これは先日のメールの
経緯等から「プロのセッションミュージシャン」というお話
である、という前提でお話させていただきますね。
えと、プロの仕事というのは通常の社会人の発想に置き換えると
すぐ答えが出ます。(この辺を結構勘違いしている人も多いよう
ですが・・・)
一般的に「良い仕事」というのは、例えば商品の制作・販売と
仮定すると、
1・その商品でないと出せない個性がある
2・ブランドイメージ的付加価値
3・値段が安い
4・営業における人柄が良い
5・制作が速い
6・クライアントの要望を満たしている
7・商品の多さ(その店にはどれくらい品ぞろえがあるか)
等があげられますよね?これは僕の主観ではなく、一般的表現と
考えます。これを音楽の「セッションミュージシャン」という仕事
に置き換えて考えてみるとわかりやすいかと思いますよ。
世間一般的ではミュージシャンは個人事業主になりますから
(固定月給を所属事務所等からもらっている場合、会社員に
なりますが)、小さな会社の社長になった気分で自らを
マネジメントしていかないといけません(マネージャーが
つく立場になれば、その必要はありません)
値段が安いということや、人柄の良さ、等についての見解は
恐らく(渋谷さんが僕に対して)期待されている回答では
無いと思いますので省略します。
まず、「制作の速さ」についてですが、これは絶対的ですね。
基本的にメジャークラスのレコーディングにおけるスタジオの
レンタル料の高さは半端じゃありません。
良い設備を使いますから、1時間ウン万という金額です。
10時間で一曲やったとしてもかなりお金がかかり、
プロデューサーは頭を抱える事になります。
そんななかで例えばギターパートに時間がかかりすぎてしまったら、
大事な歌の録音やミックスダウンの為の時間が削られる事になりますし、
制作予算も時間に比例して膨らんでいきます。
お金はどれだけかかっても良いから良い物を作る!と
いうノリは現実には少ないですね。
だからこそ、短い時間で良い物を作ってくれるミュージシャンが
必要なのです。しかし、やっつけ仕事は絶対駄目です。芸術と
いうのはどこまでいっても良いか悪いかですから、いくら仕事が
早くても悪い物ではどうしようもありません。そのために必要な技術は
「耳の良さ」だと思います。どんなプレイを曲やクライアントが
望んでいるのかを瞬時に判断する耳、これが大事ですね。
バッキングも大事ですが、場合によっては「ギターが入ってない」
方がカッコいい曲もあると思いますから。
頭に浮かんだフレーズを即形にするためにも耳は重要です。
耳が悪いと思いついた事を音程化できませんから…
逆に思いつき、音程化もできたフレーズをすぐ弾けるように
するにはメカニカルテクニックが重要です。
しかし、ただフレーズが羅列されてても駄目です。
歌心が無いと駄目なんです。面白い話をすると、
僕がハードロック系のバンドマンだった頃は自分の周りには
似たようなジャンルの人が多いですから、
例えばスウィープピッキング等で速いフレーズを弾いたりすると
「おぉ、スゲェ!」ということになりますが、
そういうフレーズはウチの事務所の森岡麗みたいな
音大まで行ってクラシックをやってる人には
全く通用しなかったりしますね。
その何十倍も難しいフレーズが帰ってきます。
が、逆にいつも彼の家に行って僕が適当にテレビの音等に
合わせて弾いていると(そんな大したフレーズは弾いてませんよ、
だってテレビを見るのがメインで、僕としてはそんな適当な音を
森岡麗が真剣に聞いてるなんて思わないですから)、
彼は「なんて凄いテクニックなんだ!」と誉めてくれます。
何にも準備しないで遊んでるだけなのでそういう誉め方を
されると恥ずかしいですが…メロディを思いつき、フレーズの
断片をつないでいく能力のような物が必要かもしれません。
次に商品の多さですが、これは音楽ではどれだけのフレーズの
引き出しがあるか?ということに置き換えられます。
経験による部分もここでは出てくるかもしれませんから、
新人の方の場合は、自分の得意なものをまず磨く、という形が
良いと思います。
ここで、僕は一度もヌーノ級&エディーについて説明をしていない
のですが、なぜかと言うと、そういうテクニックは勿論必要なの
ですが、それ以上に、「その人にギターをお願いする必然性」が
あるかどうか?ということが重要なんです。他の人でも出せるサウンド
であれば、人柄が良く、場所も近く、ギャラも安い人にお願いする
というケースが十分考えられます。しかし、それでは新人のミュージシャン
にはいつまで経っても仕事が回ってきません。
僕は新人の方にはテクニックよりも「その人にしか出せない音楽性
を持っているか?」という事をいつも期待しています。テクニックは
ベテランには適いません。練習時間もキャリアも違いますから。
それよりも何か勢いのある、斬新な音楽性というものを追求している
若手ミュージシャンには声がかかることも多くなってくるのでは
ないでしょうか。僕自身もいつもそういうことに気を付けて練習に
取り組んでいます。そういうことをやっているうちにいつか「渋谷さん
でないと出せない音」が身に着くと思いますよ。それがブランドイメージですよね。
最後に、8f、11f、16fのストレッチはかなり手が大きい人
でないと出来ないテクニックだと思います。僕の指は大きい方ですが、
やっと届く、という程度ですね。僕ならそのサウンドを出す為であれば
他のポジションを選択して弾くと思います。ギター頑張って下さいね!!
[前のページ]
[メニュー]
[次のページ]