Q&A


  ■音楽の勉強はどの位の範囲まですれば良いのでしょうか?
質問:加茂さん、こんばんは。そしてはじめまして。
検索をしていてこちらにたどり着きました。
早速ですみませんが、質問させてください。
自分はブルースやブルース・ロック(アコースティックも含めて)、
そういう匂い・香りのする音楽が好きです。
(R&BやJazzなどの要素もちょっぴり加えていたりしてもごきげんです)
具体的に有名どころを挙げますとクラプトン、SRV、R・クーダー、
D・トラックスあたりでしょうか。皆さんの質問を全て読んだわけでは
ないのですが、目を通した範囲と研究室のコラムを拝見する限り、
列挙した人たちのソロ・アプローチは加茂さんがロックを演奏する時の
アプローチと考えてよろしいでしょうか?自分も上記の人たちのような
音楽を作り演奏してゆきたいのですが、もちろん理論の勉強も必要
でしょうから行っていますが、どの範囲まで勉強すればいいのか
迷ってしまいます。たとえば、コードごとにスケール・チェンジできる
ようになったり、コード・トーンに敏感に慣れればどんな曲でも
一応は弾きこなせるでしょうから心強いでしょう。
しかし、加茂さんのおっしゃるように、自分のやりたいことに
そういったアプローチをすると”らしさ”を失いかねないの
ではとも思います。小難しいことに目を向けるよりも、ブルース系の
フレーズを100といわず膨大な数を覚え、メロディアスに
情熱的に弾けることに専念するべきでしょうか。あるいはJazzを
やるつもりはなくても勉強ととらえ、ポップスやジャズ的な
アプローチにも取り組んだほうがいいのでしょうか?
アドバイスをいただけますと幸いです。(from シュンローさん)

回答:シュンローさん、はじめまして。
ブルース、ブルースロックかっこいいですよね。僕はクラプトンが
好きですね〜。早速回答です。「列挙した人のソロ・アプローチ」って
クラプトン、SRV、R・クーダー、D・トラックスさんのアプローチって
いう意味ですよね。彼等は確かにロック的なアプローチをしていると
思われますが、ここではレイボーンを例に挙げさせていただきますが
彼クラスになると、ロック的とかジャズ的とかそういうものを超越
してしまったところにいるんですよ。

「Riviera Paradise」という曲を是非聴いて欲しいのですが、
(レイボーン好きなら勿論既に聞かれていると思うのですが確認の意味で)
あの曲は、ジャズ的なコードチェンジをしています。シュンローさんの
おっしゃるようにコードごとにスケールチェンジをしないと通常は
弾けません。この曲って先にレイボーンがソロを弾いて、その後
ピアノソロが入るのですが、ピアノソロはコードに沿ったスケール
チェンジでソロを弾いています。しかし、レイボーンはなんといつもの
ペンタトニック・スケール中心でフレージングしてしまい、しかも
それが普通に聞こえてしまうのです。これが彼の驚異的なところで、
コード進行よりも彼のブルースフレーズが勝ってしまっているんですよね。
僕は、ブルースが演奏出来るということはギタリストにとって最も
重要なことだと考えています。逆に、ブルースがしっかりと演奏出来れば
ジャズミュージシャンともロックミュージシャンともポップスのミュージシャン
ともコラボレーションすることが出来て、プレイヤーとしては大きな幅が
生まれます。だから勉強と言う意味ではブルースとサイドギターは重要です。

音楽の勉強に関してなのですが、基本的なスタンスとしては
自分がやりたいことをやりたいようにやっていくものだと思うんですよ。
音楽って。ただし、「プロ」ということを基準に考えたときに、「プロ」
という名前を背負う以上、「ある一定以上の事が出来る」ということが
問われてくると思っています。どうしてかというと、それは例えば
シュンローさんがプロのロックギタリストになったとしますよね。
で、まずは自分のバンドが商業的に成功してそれだけで食えたら最高ですよね。
だから、まずはそれを目指すというのは絶対に間違ってないんですよ。
ただ、高校や大学を卒業したら親のお金をあてにしないで自分の収入で
生きていかなければいけませんよね。それとは別枠な部分で。
ギター弾く前に生きていかないといけませんよね。そういった部分で
音楽と全く違う仕事をするよりは出来れば自分のギターのスキルを生かして
仕事をしていきたいということで、ロックが得意であれば、ロックバンドの
サポートミュージシャン等をやりながら、自分のバンドを平行して活動して・・・
とやっている方も沢山います。

ただ、仕事が無い時期もあるじゃないですか。サポートの仕事は当然
サポートするバンドが活動している時にギャラをもらえるわけですから、
バンドが動いてなければお金もらえませんよね。なので、そういう時に
ジャズ的なコード進行ででもカッティング出来るとか、アコースティックギターが
弾けるとかそういう広がりがあると仕事的にも良いじゃないですか。
そういった意味で、僕は色々なジャンルが弾けるのは仕事的に良い事だと
考えて自分の生徒達には教えています。ただし、そういう事をいつもやっていると
俺って何が専門なんだ?と頭をよぎる事だってあるわけですよ。
何でも屋的な感じになってしまって。

だから、自分の活動というものを大事にしたほうが良いと思うんです。
で、他の活動に関しては、その場その場で縁があったらその縁を大事に
させていただくというのがミュージシャンの生き方かなと僕は考えています。
僕は6月に縁あってFenderのバックアップを受けてフュージョンアルバム
「ノスタルジア」をリリースしました。今は、また縁あってもうすぐ詳細を
発表しますが、ハードロック、ヘヴィーメタルの速弾きを中心とした教則本を
春に出版します。ノスタルジアではDonna Leeというコード毎にスケールを
考えるような曲を演奏しました。しかし、こういったプレイばかりをやっていると
どうしても歪ませてフルピッキングで速弾きしたり、ストレッチして弾いたり
タッピングしたりするというテクニックは衰えます。
だから、今回の教則本を作るにあたって、僕は正月休みに毎日練習をして
ハードロック的な弾き方を思い出すようにしました。今度出す教則本の模範演奏CD
ではかなりアグレッシブに速弾きをしています。しかし、今度は速弾きばかり
していると、久しぶりにJazzを弾くとタイム感が合わなくて戸惑ったりします。
今は模範演奏CDの72曲全てをレコーディング終わったので、好きな事を弾いています。
今週末はJazzセッションがあるので、Jazzを弾いています。

何が言いたいかというと、僕は勉強になるから〜〜するというのは好きでは無いんです。
それが難しいとか簡単とかそういう事ではなくて、それがやりたいことや
僕に縁のある事であれば、難しいことであっても何時間も何日も何年もかけて
それをマスターしたいと思います。ただ、やりたいことでなければたとえ簡単な事で
あってもやりたくありません。それは僕らしい生き方で無いので無理なんです。
こういう事感じた事ありません?「一生懸命」って言葉って人によって大分差がありますよね。
例えば、レイボーンみたいに弾けるようになりたいって一生懸命練習している人も
いれば、大して一生懸命やっていないのに、レイボーンみたいに弾ける人がいますよね。
それって、僕は後者の人は「一生懸命やっていない」と自分で感じているだけで
実際は前者の人よりも物理的な練習時間は多いのかもしれない、と思うわけです。
ということは、勉強していると考えるという行為自体が、効率が悪いのかもしれませんよね。
究極の勉強って「毎日遊んで暮らす事かな」と。毎日ギターで遊んで楽しいな、
って感じられる事をやり続ければ勉強も何にもやっていないのにギターが上手くなっている。
レイボーンやクラプトンからなんとなくそういうものを感じるんですよね。

僕は縁とか感覚とか、情熱とか、そういったものを大事にしています。
理論とか勉強とか、データベース的に何かを覚えるとか、そういったものは僕は
大学の数学科で勉強して、完結したんですよ。アドバイスというか、僕の意見に
なってしまいましたがこういう人間もいるということで参考にしていただければ幸いです!!

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