2004/07/24 SHIBUYA-FM 78.4Mhz「GOOD WAVE」10回目

 

思えば、音楽を学んでいて僕が最も理解するのが難しかったのが
「ブルース」という音楽です。複雑なハーモニーを理解したり、
メカニカルな演奏をするということに関しては、仮に時間がかかったと
してもそんなに苦痛に感じないのですが、このブルース感覚というもの
を掴める様になるまでは、正直焦りの気持ちとかもありました。
「クソッ、何故俺はブルース感覚が無いんだ?」「一体何枚のCDを聞くと
知らない音楽は無くなるんだ?」みたいな感じで毎日毎日悩んでいたの
を思い出します。例えばギターにおいてブルースを弾くのはメカニカル的
見地からは最も簡単な音楽の部類に入ります。コードはたった3つ、
スケールもブルーノート・ペンタトニック・スケール一発でまず問題ない。
しかし、「ブルージーに聞こえるか?」と言われると、それはとても奥深い
ものでペンタトニックスケールをブルージーに歌わせるのは物凄く難しい
のです。確かに技術的な問題もありますよ。しかし、本質はそういうもの
ではありません。「ブルース感覚」が頭の中にないと、指がいかに正確
に動いてもブルースは弾けないのです。 今週はそんなことを僕に気づ
かせてくれた楽曲をオンエアします。

2004/07/24 On Air
COMRADE SELECTION  テーマ「ブルージーなテイストの楽曲」

1・Jessica(The Allman Brothers Band)
2・In Memory Of Elizabeth Reed(The Allman Brothers Band)
3・Superstition(STEVIE RAY VAUGHAN)
4・Riviera Paradise(STEVIE RAY VAUGHAN)

オールマン・ブラザーズ・バンドを聞く前はそのバンド名からイメージ
する音として、泥臭いイメージを持っていたのですが、実際に聞いて
みるとどちらかというと「お洒落なブルース」だと僕は受け取りました。
Jessicaもブルージーなんだけど曲の構成はしっかりしているし、
テーマ・メロディーをとても大事に作ってあります。ピアノもとてもカッコ
いいですね。しかし、あくまでも基本はブルースです。楽曲のコード
進行もブルース進行ではありませんが、ブルースを昇華することに
よって生まれる「ブルージーなテイスト」というものをこの楽曲は持って
います。

In Memory Of Elizabeth Reedもディミニッシュのフレーズ
であったり、ドリアン・モードを使ったインプロパート等お洒落な要素
を持っていますが、僕にはこれらもブルースに感じられるのです。
そう、ブルースとはあくまでも感覚的なものなので、仮にブルースの
コード進行でブルーノートを使って弾いたとしてもブルースに聞こえない
楽曲だってある、っていうことです。機械的にスケールを弾いて
しまうようなアプローチは最悪です。ブルーノートを機械的に弾いたら
ただの気持ち悪い音使いになってしまうでしょう。

ブルーノートの一つに「短3度と長3度の間の音」というものがあります。
これは簡単に言うと「ミとミ♭の間の音」に当たるために厳密に言うと
鍵盤楽器では出せない音です。ですから、鍵盤楽器でブルーノートを
演奏するためには「歌わせ方」にとても気をつけないといけません。
例えば、長3度から短3度に下るようなフレーズは気持ち悪いです。
ブルーノートは「歌っていなきゃ意味がない」のですよ。
この要素をオールマン・ブラザーズ・バンドからは感じることが出来ます。

スティービー・レイボーンは凄い!太い音色とかギターのテクニック面
の事も良く評価されていますが、レイボーンのブルース感覚に僕は影響
を強く受けました。まず、サウンドがアグレッシブ!スティービーワンダー
の名曲Superstitionも彼が弾くとハードなロックの曲に生まれ変わり
ます。レイボーンのボーカルもブルージーで良いですね。

極めつけはRiviera Paradise!!レイボーンはジャズの素養があるよう
で、コード進行やアプローチ等がジャズのセンスを感じさせるものが
あるんですが、この曲のコード進行は転調を沢山含むもので、当然
ペンタトニック一発では弾けない=コードに合わせたフレーズを弾いて
いくコーダルなアプローチが通常のパターンだと思いますし、実際に
ピアニストはアドリブの際にスケールチェンジをしています。
しかし!レイボーンは!殆どペンタトニック一発でこのコード進行を
乗り切ってしまうんです!それは彼のセンスが極めてメロディアスな
ので、仮に音がぶつかってしまったとしても、それ自体をメロディアス
にしてしまう歌いまわしを心得ているからだと僕は思います。
これはまさにブルースから得たものなのではないでしょうか。

今週は「ブルージーなテイストを持つ楽曲」という事でお送りしましたが
僕がブルースを勉強する上で最も大事にしたのは「ブルースフィーリング
溢れる楽曲を聴きまくる」という事でした。ブルース感覚って指では
覚えられない気がします。聞いて、感動して、そしてまた聞く。
だれでも弾けるはずのシンプルなメロディーが実に奥深いというのが
ブルースの魅力であり難しい所なのかもしれませんね。
番組へのお便り、僕やSingへのご感想・ご質問どんどん待って
いますので、「SHIBUYA-FM GOOD WAVE係」まで、
メール下さい!
お待ちしております!!



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