毎日梅雨でじめじめと過ごしていますが、僕のここ2年くらいかけて
取り組んできた研究が一つ身を結びそうです。
それは、「ソフト・シンセ」「ソフト・サンプラー」の研究だったのですが、
僕の愛用のシーケンサー「レコンポーザ」では、どうしてもハードウェアの
シンセやサンプラーを使うしかなくて、ソフトシンセを使うにはかなり手間が
かかっていたのです。近年マシンを2台にすることによって、コンピューターを
「シンセ」として使うことができる技術が注目されていますが、「理論的には
出来るはず」でも、「やってみるともろもろとバグがあって上手くいかない」と
いうのが現実というもので、今現在においてもかなりのバグに悩まされて
いるのですが、それでもなんとか仕事で使うことが出来るようになってきました。
これはここ2年の僕の悩みを一気に解消してくれる凄い武器になると確信して
います。ソフト・シンセ&サンプラーを使えば、なんと「MIDIデータを実際の
”音”に変換する」という行為が行えるようになります。
音とは空気の振動で、真空中には音は存在しない・・・録音という行為は
振動を記録することである・・・などの長年の音楽理論を覆す程のバーチャル世界。
ソフトだからこそ可能な、空想の世界。「あぁ、MIDIが一気にオーディオに
なってくれたら良いのに・・・」この不可能を可能にするのがソフトシンセなのです。
しかも、バーチャルのくせに音が良い!むしろソフトシンセの方がハードシンセ
よりも音が良い位ですよ。「ケーブルがいらないからノイズが発生しないので」!
そんな思いいれのあるデジタルミュージックなのですが、今日のCOMRADE
SELECTIONでは「打ち込み音楽の世界」をお送りしたいと思います。
2004/06/12 On Air
COMRADE SELECTION テーマ「デジタルミュージック」
1・HYPERBALLAD(BJORK)
2・JOGA(BJORK)
3・Let It Go/Jazzanoba Mix(Shaun Escoffery)
4・Let It Go/4Hero&JasonRebello Mix(Shaun Escoffery)
ビョークは「素晴らしいサウンド・クリエイターを発掘する」という意味において
マドンナと並ぶ才能を持っていると思います。取り分け打ち込みを担当する
シンセ・マニピュレーターに関してはビョークのスタッフは世界最高の技術、
サウンドを持っていると思います。時間軸と共に変化していくシンセの音。
自分で打ち込んだとしたら一体どの位時間がかかるのか?と思わず制作時間
を計算してしまうほどのハイクオリティな打ち込みの世界がビョークの作品には
広がっていますが何より凄いのは、こういう打ち込みの音楽ってメロディーを
重視しないというか、ぶっちゃけメロディーが無い曲の方が多いんでは?っていう
感じもあるじゃないですか、正直言って。ところがビョークの楽曲には「メロディー」
と「構成」 というものが明確に存在しているのです。しかも、ビョークのメロディーは
オリエンタルなムード漂う独特なものであり、そのメロディーを歌うビョーク自身も
また大変エモーショナルなボーカルテクニックを持っているのです。
JOGAのボーカルは激情をぶつけたような感じを持っています。ストリングスとの
コンビネーションも素晴らしいものがあります。
ショーン・エスコフェリーは良い声を持つソウル・シンガーで「Let It Go」は彼の
ボーカルを堪能できる名曲ですが、ここではJazzanobaと4Heroというリミキサー
に焦点を当ててみたいと思います。3曲目も4曲目も同じ曲のリミックスなの
ですが、全く別な曲に聞こえるほどこれらの曲は個性的な仕上がりになっていて
かつ、説得力のある音に仕上がっています。ジャザノヴァはハウス的な最新の
ビートを使ったミックスを得意としていますが、その打ち込みはお客さんを
クラブで躍らせる為に極限まで練られていて、シンプルに聞こえるハウスビート
でも、微妙にステップタイムをいじっていたり等の計算があるサウンドに聞こえます。
恐らく、ラテンのグルーブとジャズのハーモニーをかなり研究しているのだと思われます。
4Heroのミックスはかなり斬新なもので、ジェイソン・リベーロという腕利きの
ジャズ・ピアニストに楽曲まるごと自由にインプロヴァイズさせた全く新しい
インストに仕上がっています。 強烈なアドリブソロの後ろに鳴っているダンス・
ビートと気持ちを高揚させるシーケンス・パターンも聞き逃せません。 踊れるジャズ、
とでも言うのでしょうか。こういうジャンルの事を「フューチャー・ジャズ」というよう
ですが、まさにその言葉がぴったり当てはまる楽曲に仕上がっていると思います。
COMRADE SELECTION第4回目をお送りしましたが、フューチャー・ジャズに
関してはかなり僕も影響を受けていて、自分のソロ作品にはそういう要素を出して
いきたいと思っています。2年間かけたソフト・シンセの研究結果というものも
ソロ作品の中で出していきたいと思って、現在コツコツと制作中です(笑)
番組へのお便り、僕やSingへのご感想・ご質問どんどん待っていますので、
「SHIBUYA-FM GOOD WAVE係」まで、メール下さい!
お待ちしております!!
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